【バシャールで哲学】真理の価値 第二話

何のために人はこのオンラインゲームをするのだろう?

このゲームのプレイヤーである僕は、いつしかそんな妄想に憑りつかれてしまっていた。
ゲームは楽しむためにやるに決まっていた。

みんなそれが楽しいからこのオンラインゲームに参加したはずだった……。

しかし、僕はゲームが楽しくなかった。

このオンラインゲームには特に決まった目的はなかった。
各プレイヤーが自由に目的を見つけ、その目的達成を目指してプレイするのだ。

通貨をたくさん集めるプレイヤー、恋人をたくさんつくるプレイヤー、戦いに勝利することのみを目的とするプレイヤー、とにかく冒険が好きなプレイヤー、それぞれのプレイヤーがそれぞれの目的を見つけ、その目的達成のためにプレイをしている、それがこの世界のはずだった。

しかし、僕はまったく楽しくなかった。
いや、苦しくさえあった。

すべてがうまく行かなかった。
何をやってもうまく行かなかった。

だから途中からこのゲームは苦痛でしかなかった。
そして気がついた時にはすっかり、生きる目標を見失っていた。

ゲームの攻略本というのは存在していたし、誰でも手に入れることは出来た。
先に目的を達成した人々が、それらの本を出していた。

僕もそれらの本は数多く読んだことはある。
しかし一回としてなんらかの目的を達成したことはなかった。

攻略本に書いてあることはわかる。
しかし、僕にはやる気が起こらなかった。

やる気が起こらなかった理由は様々にあった。
ものすごい努力が必要であったり、他人を騙したり、他人を押し退けて目標を達成するのは、パスだった。

目標は達成したい、目標を達成すればみんなから羨望の眼差しで見られ、気分が良いだろう。
そして、次の新たな目標を設定し、それに向かって突き進んで行くのは、とっても楽しいことに思われた。

いや正確には、攻略本に書いてあることを、自分で実際にやってみたのだ。
できることはやってみた。ただ、続かなかっただけだ。

目標は達成したい。達成したらきっと楽しくなるだろう。
でも実際は、少しも目標へとは前進しない。

他のプレイヤーにはできるのに、なぜ僕には出来ないのだ?
攻略本だって途中で挫折だし……、そう考えるとひたすら自己嫌悪に陥るのだった。

そんな時だったその攻略本に出会ったのは。

その攻略本は、別のオンラインゲームでプレイしているプレイヤーが、このオンラインゲームのプレイヤーのアバターを借りて書いたものだった。

この世には、オンラインゲームはこのオンラインゲームしか存在しないのは常識だった。
このオンラインゲームだけがゲームであり、このゲーム内でゲームオーバーになるのは、死を意味するのは、どんなプレイヤーだって疑うことはしない。

だから、どう考えてもその本は胡散臭い本だったのだ。

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